モダンアンテナとは? ~発足から今まで~

その日。

その頃私は何もせず、ふらふらとまるで抜け殻のように時間を無駄に過ごしていました。何もやる気がおきず、NEETでした。技術はある、しかしやりたい仕事もなく、ただ息を吸って吐いて、メシ喰って用を足す。それだけの毎日でした。ある日のこと、いつものようにボーッと実家でごろごろしていると母親が何かしている。その頃母親は「れえすの花」さんと呼ばれ、着物仲間達に古布の柄を切り取ってアップリケした帯を作ってあげたり、時には依頼され買ってもらったりしていました。その古布がなにやら気になり「ちょっと見せて」と手に取りじっくり見てみますと、ムクムクと頭の中が回転し始めました。モダニズム。私が好きな芸術の姿勢が目の前にあるのです。こんな着物あるんや・・・。すると母親がこれデジタルで復刻できないの?と聞いてきた。「簡単やろ。」と私。そんなわけでまずは「れえすの花」と言う屋号で発足します。

金銭感覚と価値観の差

私はこのときから着物は高くて面倒くさいなと常々感じておりました。なぜだろうかと。つまりそれは作り手からお客様の手に届くまで何人もの人間が存在しているから他ならないと考えたのです。たかだか「着る物」に何十万円、何百万円も誰が好んで買ってくれるのだろう。値段をつり上げてさも高級品の顔をさせられているどこにでもありそうな着物達。その着物がまるでその価値があると思い込まされて買わされるお客様。はっきり言います。着物は宝石じゃありません。有機物質で出来ており、色も褪せます。繊維も崩壊し、ぼろぼろのただの布きれになります。どれだけ繊細で豪華な柄が描かれていても終わりがくるのです。「その儚さがいいのよ」なんて方はどうぞ「そういう着物」をご購入ください。着物とは着る物であり、ファッションの一端です。その瞬間をかっこよく、美しく、時にはやんちゃにかわいく。体に纏うウェアです。

モダンアンテナのデザイン。

帯芯
前述しましたが、モダンアンテナは着物をファッションの一端だととらえておりますので基本的にお客さまの目に新しい物を提供したいといつも考えて居ます。古い着物の復刻も色をダイナミックに変更します。新たにデザインするときはモダニズムを基軸に数列など用いたり、出来るだけ未来志向なデザインをと考えて居ます。未来志向とは、単に「古いものではない」ということ。過去の膨大なデザインに影響を受け、それを踏まえて新たな解釈で創造すること。昔のよかったものをそのもの復刻もモダンアンテナの大事な使命ではございますが、たとえばピカソが今生きていてあのような作品を作っていたでしょうか?パウルクレーがこの時代に生きていたら。全盛期のビートルズがこの時代を生きていてあのような音楽をしていたでしょうか。ボブディランが今生まれたら。断言できます。絶対にやっていない!なぜなら彼らはその時代に過去の作品達に影響されつつ新しい「もの(概念や思想、意志)」をクリエイト(創造)したのですから。そして何より皆を楽しませた。私たちもそうありたいと思っています。お客様が着物をより楽しんでいただける様にと。

手間はかけます。

染めクオリティー
作る物に手間がかかるのは当たり前です。しかし、モダンアンテナは手間を売っているわけではございません。服を売っています。デザインとクオリティーを売っています。


着物の甘さ。

始めた頃、着物は濡れたら色が流れるのが当たり前だと言われました。私は全くもって甘い考え方だと思い、広海(蒸し屋さん)の藤井専務に相談しました。彼もやはり同じでぬれても色が流れ落ちない着物が必要と考えておられました。正絹の場合繊維への直接的な染着は不可能ですので如何にして繊維の隙間に染料をとどめさせらるかが勝負です。今もその努力はされております。すばらしいことだと思います。それはすべて着物を購入され、着物を着る人の立場に立った考え方により生まれたベクトルです。いつも言います。職人はこだわりを持たないといけないと。なぜならお客様はその中から選ぶしかないのですから。だから我々はこだわります。品質という点に於いてこれでもかと言うほどに。